簿記2級では、3級までの商業簿記に加えて「工業簿記」が登場します。
初めて勉強すると、
「商業簿記と考え方が違って分からない」
「計算方法が多くて覚えられない」
「商業簿記を全部終えてから工業簿記を始めた方がいい?」
と迷う人もいるでしょう。
工業簿記で重要なのは、最初から計算方法を一つずつ暗記することではありません。
まず、
何のために計算しているのかを理解する
↓
基本問題を解く
↓
何も見ずに解けるようにする
↓
複数の論点を含む問題へ進む
という順番で学習します。
そして途中で問題を解けなくなったときは、単に「工業簿記が苦手」と考えるのではなく、どこで止まっているのかを特定することが大切です。
この記事では、工業簿記の基本的な考え方から、つまずいたときにどこまで戻ればよいかまで整理します。
工業簿記は簿記2級から新しく加わる
日商簿記2級の試験科目は、
商業簿記
+
工業簿記(原価計算を含む)
です。
日本商工会議所は、商業簿記を企業外部との取引を記録・計算する技能、工業簿記を企業内部で部門別・製品別の材料・燃料・人力などの資源投入を記録・計算する技能と説明しています。
3級では基本的な商業簿記を学ぶため、工業簿記は2級から新しく学ぶ領域です。
そのため、3級までの勉強と感覚が違うと感じても不思議ではありません。
たとえば製品を作る会社では、
材料を用意する
↓
製品を作るために加工する
↓
製品が完成する
という流れがあります。
この過程で、材料や人件費など「製品を作るためにいくらかかったのか」を計算する必要があります。
工業簿記では、こうした製造活動に伴う原価を記録・計算していきます。
最初から個々の計算方法だけを見るのではなく、企業の中で何を計算しているのかを意識して学習を始めましょう。
工業簿記は「計算方法の暗記」から始めない
工業簿記では、さまざまな計算方法が登場します。
そのため、
「この問題ではこの式を使う」
と計算手順だけを覚えようとすると、少し問題の形が変わったときに迷いやすくなります。
まず確認したいのは、
何を求めようとしているのか
です。
たとえば材料や労務などにかかった費用を把握し、それを製品の製造に結びつけていきます。
この全体像を持ったうえで個別の計算方法を学ぶと、
「なぜこの計算をするのか」
を理解しやすくなります。
新しい論点を勉強するときは、
① 何を計算する論点なのか
↓
② どの数字を使うのか
↓
③ どのような手順で計算するのか
という順番で確認してみましょう。
計算式そのものを覚える前に、計算の目的と流れを理解することがポイントです。
商業簿記を全部終えてから工業簿記を始める必要はない
3級から2級へ進むと、商業簿記はこれまでの続きとして勉強を始めやすい一方、工業簿記は初めて学ぶ分野になります。
そのため、
「まず商業簿記を全部終わらせてから工業簿記を始めよう」
と考えることもあるでしょう。
しかし、2級では商業簿記と工業簿記の両方が試験科目です。
商業簿記だけを長期間勉強していると、工業簿記に取りかかる時期が後ろへずれてしまいます。
必ず2科目を同じ日に勉強する必要はありませんが、工業簿記を学習計画の最後まで残さないことが重要です。
たとえば、
商業簿記の基礎学習を進める
↓
工業簿記の学習も開始する
↓
両方の問題演習を進める
↓
本試験形式で両方を解く
というように、試験対策の途中から両方を進められる状態を作ります。
簿記3級から2級へ進むときに何が変わるのか整理したい場合は、先に3級との違いを確認しておくと学習計画を作りやすくなります。
関連記事:簿記2級は3級と何が違う?勉強を始める前に知っておきたい5つの違い
工業簿記は「理解→基本問題→反復」で進める
工業簿記の新しい論点を勉強するときは、テキストを一度読んで終わりにしません。
基本的には、
内容を理解する
↓
対応する基本問題を解く
↓
間違えた理由を確認する
↓
もう一度解く
という流れで進めます。
最初の問題演習では、テキストや解説を確認しながらでも構いません。
重要なのは、その後に何も見ずに同じ考え方を再現できる状態まで進むことです。
たとえば解説を読んだ直後なら問題を解けても、数日後に同じタイプの問題を解けないのであれば、まだ定着していない可能性があります。
この場合、新しい論点へ進み続けるより、基本問題をもう一度解いた方がよいでしょう。
工業簿記では、
分かった
と、
自力で解ける
を分けて考えます。
工業簿記が分からなくなったら原因を5つに分ける
工業簿記の勉強が進まなくなったときに、
「自分は工業簿記が苦手だ」
だけで終わらせると、何を直せばよいのか分かりません。
まず、どこで止まっているのかを確認します。
用語の意味が分からない
問題文やテキストを読んでも、用語そのものの意味が分からない状態です。
この場合は問題を何度も解く前に、テキストの説明へ戻ります。
確認したいのは、
その言葉が何を表しているのか
↓
製造のどの段階で登場するのか
↓
何のために分類・計算するのか
です。
用語だけを単独で暗記するのではなく、製造や原価計算の流れの中で位置づけます。
計算の流れが分からない
用語は分かるものの、
「なぜこの数字とこの数字を使うのか」
が分からない状態です。
この場合は、計算式を暗記し直すより、一つ前の段階へ戻ります。
問題を解く前に、
何を求める問題なのか
↓
そのために必要な数字は何か
↓
どの順番で計算するのか
を整理します。
答えを出すことより、途中の計算が何を意味しているのかを確認しましょう。
解説を読めば分かるが自力で解けない
解答を見ると、
「そういうことか」
と理解できるものの、自分だけでは最初の一手が出てこない状態です。
この場合は、インプットより問題演習が不足している可能性があります。
同じレベルの基本問題を使って、
まず自分で解く
↓
間違える
↓
解説を確認する
↓
もう一度何も見ずに解く
という反復を行います。
テキストを最初から読み直すより、問題を解きながら必要な部分だけ戻る方がよい場合もあります。
時間を空けると解き方を忘れる
勉強した直後は解けるのに、数日後には解き方を忘れてしまう状態です。
この場合は、一度理解しただけで次の論点へ進み続けている可能性があります。
新しい範囲だけでなく、以前学習した問題も定期的に解き直します。
たとえば、
新しい論点を学ぶ
+
以前の基本問題を数問解く
というように、復習を学習計画に組み込みます。
目標は「一度正解した問題を増やすこと」ではなく、時間がたっても自力で解ける問題を増やすことです。
個別問題は解けるが総合問題になると解けない
論点ごとの基本問題は解けるものの、複数の内容が組み合わさると判断できなくなる状態です。
これは、基礎学習から次の段階へ進むタイミングと考えられます。
基本問題だけを繰り返すのではなく、
複数の論点を含む問題
↓
本試験形式の問題
へ演習範囲を広げます。
間違えたときは総合問題を最初から何度もやり直すだけではなく、
どの論点で間違えたか
を確認し、その部分の基本問題へ戻ります。
総合問題と基本問題を往復しながら、弱い部分を減らしていきます。
工業簿記で止まったときは「戻る場所」を決める
ここまでを整理すると、つまずいた状態によって戻る場所が変わります。
| 今の状態 | 戻る場所・次にすること |
|---|---|
| 用語が分からない | テキストの基本説明・全体像 |
| 計算の意味が分からない | 計算の目的と手順 |
| 解説なら分かる | 基本問題の反復 |
| 数日後に忘れる | 復習の頻度・学習計画 |
| 総合問題だけ解けない | 総合演習+弱い論点の基本問題 |
「工業簿記が苦手」という一つの状態があるわけではありません。
自分がどの段階で止まっているかによって、必要な対処は違います。
問題を解けなかったときは、
新しい教材を買う
前に、
どこまで戻ればもう一度解けるようになるか
を確認してみましょう。
工業簿記で教材を増やす前に確認する
工業簿記が分からないと、
「もっと分かりやすいテキストを買った方がいいのでは?」
と考えることがあります。
教材を変更した方が理解しやすくなる場合もありますが、教材そのものが原因とは限りません。
たとえば、
テキストは理解できるが問題演習が不足している
のであれば、別のテキストを買っても同じ状態が続く可能性があります。
反対に、
何度読んでも説明の意味が理解できない
のであれば、別の解説や動画などを補助的に利用する意味があります。
教材を追加する前に、
説明が分からないのか
問題量が足りないのか
本試験形式の演習が足りないのか
を切り分けましょう。
不足しているものが分かれば、必要な教材も判断しやすくなります。
関連記事:簿記2級のテキストはどう選ぶ?独学で必要な教材と買い足す判断基準
工業簿記だけ進まなくても独学全体をすぐ変える必要はない
工業簿記でつまずくと、
「独学では無理なのでは?」
と感じることもあるでしょう。
ただし、一つの論点を理解できないことと、独学そのものが合っていないことは同じではありません。
まず、
特定の論点だけ分からないのか
↓
工業簿記全体の説明を理解できないのか
↓
商業簿記を含めて学習計画そのものが進んでいないのか
を確認します。
特定の論点だけなら、その部分を復習したり、別の解説を確認したりすることで解決できる可能性があります。
一方、
- 分からない部分を質問できず長期間止まる
- 自分で学習順序を決められない
- 商業簿記・工業簿記の両方で予定どおり進まない
- 教材を何度変えても学習が進まない
という状態なら、教材だけではなく学習方法そのものを見直す余地があります。
この場合も、
独学がうまくいかない=すぐ通信講座
と決める必要はありません。
まず何に困っているのかを整理し、その問題を独学の工夫で解決できるのか、それとも質問環境や学習管理など別のサポートが必要なのかを考えます。
関連記事:簿記2級は独学で合格できる?始め方と「独学を続けるか」の判断基準
独学を続けるか、通信講座などへ学習方法を切り替えるか迷っている場合はこちらも確認してください。
関連記事:簿記2級は独学と通信講座どちらがいい?途中で切り替える判断基準も解説
工業簿記の学習状況を3段階でチェックする
工業簿記の学習がどこまで進んでいるかは、次の3段階で確認できます。
STEP1 解説を確認しながら基本問題を解ける
まずは、新しい論点の内容を理解して基本問題へ進みます。
この段階では、分からなくなったらテキストや解説を確認して構いません。
重要なのは、
問題を見たときに何を求めるのか理解できること
です。
STEP2 何も見ずに基本問題を解ける
次に、テキストや解説を見ずに問題を解きます。
以前正解した問題でも、時間を空けてもう一度解いてみましょう。
自力で計算手順を再現できれば、その論点の基礎が定着してきたと判断できます。
解けなければ、新しい範囲へ進み続けるのではなく、間違えた部分へ戻ります。
STEP3 複数の論点を含む問題でも解ける
基本問題を自力で解けるようになったら、複数の論点を含む問題へ進みます。
ここでは、
どの考え方を使う問題なのか判断する
↓
必要な計算をする
↓
制限時間を意識して解く
ところまで確認します。
最終的には商業簿記も含めた本試験形式の問題を90分の中で解くことになります。
そのため、工業簿記の個別論点を理解することをゴールにせず、本試験形式の演習へつなげていきます。
工業簿記は「苦手」と決める前に止まっている場所を確認しよう
簿記2級では、3級までにはなかった工業簿記を新しく学びます。
初めて学ぶ内容なので、途中で分からなくなること自体は不自然ではありません。
重要なのは、
工業簿記が分からない
↓
自分には向いていない
とすぐに判断しないことです。
まず、
用語が分からないのか
↓
計算の意味が分からないのか
↓
自力で問題を解けないのか
↓
時間がたつと忘れるのか
↓
総合問題で崩れるのか
を確認します。
止まっている場所が分かれば、戻る場所も決められます。
工業簿記を学習計画の最後まで後回しにせず、内容を理解したら基本問題を解き、何も見ずに解ける状態まで反復する。
そのうえで複数論点の問題、本試験形式へと段階を上げていきましょう。

