簿記2級の過去問・予想問題は、学習済みの論点なら大問ごとの演習から始められます。商業簿記・工業簿記の主要範囲を一通り学び、基本問題を自力で解ける論点が増えたら、本試験形式へ進みましょう。
開始時期は「試験1か月前」のように日数だけで決める必要はありません。最初から70点を取ることだけが目的ではなく、基本問題では見つけにくい弱点を確認するためにも演習を使います。
この記事では、過去問・予想問題・公式サンプル問題の違いと、演習開始の判断基準、解いた後の見直し方を整理します。
簿記2級の本試験対策は「試験○日前」だけで決めない
本試験形式の問題を始める時期について、
「試験1か月前から」
「試験2週間前から」
など、日数を基準に考えることがあります。
しかし、同じ試験1か月前でも学習状況は人によって違います。
たとえば、
Aさん
商業簿記・工業簿記の主要範囲を学習済みで、基本問題も自力で解ける。
Bさん
まだ未学習の範囲が多く、基本問題も解説を確認しながら解いている。
この2人が同じ日に本試験対策を始める必要はありません。
Aさんなら、本試験形式の問題へ進んで現在の弱点を確認する段階です。
一方、Bさんなら、本試験形式の問題だけを何度も解くより、まず基礎学習を進める必要があります。
つまり、
試験まで何日あるか
だけではなく、
現在どこまで自力で問題を解けるか
も確認して、本試験対策へ進むタイミングを判断します。
「過去問」「予想問題」「公式サンプル問題」は分けて考える
簿記2級の本試験対策を調べると、
- 過去問
- 予想問題
- 模擬問題
- サンプル問題
など、さまざまな言葉が出てきます。
同じものとして扱わず、それぞれの役割を分けて考えましょう。
過去問
過去問は、過去の本試験で実際に出題された問題です。
ただし、現在の日商簿記2級では、本試験問題そのものを継続的に公開しているわけではありません。
そのため、「過去問を何年分も集めて解く」という試験対策を前提にしない方がよいでしょう。
市販教材には、過去の出題を踏まえて現在の試験形式に合わせた問題が収録されているものもあります。
教材を選ぶときは、「過去問」という言葉だけで判断せず、現在の試験形式へ対応しているかを確認します。
予想問題・模擬問題
予想問題や模擬問題は、現在の出題範囲や試験形式などを踏まえて作られた実戦用の問題です。
本試験形式で問題を解いたり、90分での時間配分を確認したりするために利用できます。
市販の予想問題集には、複数回分の本試験形式の問題や、ネット試験を想定した模擬試験プログラムが付属しているものもあります。
本試験形式を繰り返し練習したい場合の選択肢になります。
公式サンプル問題
日本商工会議所は、簿記2級のサンプル問題を公式サイトで公開しています。
現在は第1問、第2問、第3問、第4問、第5問について、それぞれ複数のサンプル問題を確認できます。
市販教材を追加する前でも利用できるため、学習が進んだら一度確認しておくとよいでしょう。
ただし、
公式サンプル問題=次回の本試験問題
という意味ではありません。
本試験形式へ対応するための演習材料の一つとして利用します。
公式サンプルには、2021年度以降に実際に出題された問題の一部が含まれます。日本商工会議所のサンプル問題公開の案内で経緯を確認できます。「本試験問題が非公開だから実際の出題には一切触れられない」という意味ではありません。
まず日本商工会議所の2級サンプル問題を開き、学習済みの大問の「問題」と「答案用紙」を選んで解いてみましょう。大問別に掲載されており、第4問は(1)と(2)が分かれています。
採点に使う解答は、公式サイトの模範解答・解説講義等の案内から確認できます。リンク先の解答・解説は各企業が独自に作成したもので、日本商工会議所の公式解答ではありません。
大問別サンプルは形式の確認や個別演習に使い、90分の通し演習には本試験形式のセット問題を使います。独立したサンプルを組み合わせた結果だけで、一回の本試験と同じ難易度や得点バランスとは判断しないでください。
予想問題は実際の出題そのものではなく、民間の教材作成者が出題範囲・形式を踏まえて作る問題です。「公式サンプルで形式を確認し、現行形式の予想問題で通し演習を重ねる」という使い分けができます。
本試験形式へ進む目安は基本問題を自力で解けること
本試験形式へ進む一つの目安は、
学習した主要論点の基本問題を、解説なしで解けるようになってきたか
です。
たとえば、
テキストを読む
↓
例題を確認する
↓
基本問題を解く
ところまで進んでも、毎回解説を見なければ問題を解けないのであれば、まだ基礎学習を優先した方がよい場合があります。
一方、
商業簿記・工業簿記の主要範囲を一通り学習した
基本問題なら自力で解ける論点が増えてきた
という状態なら、本試験形式の問題へ進んでみましょう。
ここで重要なのは、
すべての論点を完璧にしてからでなければ本試験問題を解いてはいけない
と考えないことです。
本試験形式の問題を解くこと自体が、弱点を発見する機会になります。
演習は「大問別・弱点確認・90分通し」に分ける
| 学習状態 | 始める演習 | 確認すること |
|---|---|---|
| 一部の論点を学習し、その基本問題は解ける | 学習済みの大問・論点だけを解く | 基本知識を問題形式の中で使えるか |
| 両科目の主要範囲を学び、自力で解ける論点が増えた | 本試験形式で弱点を確認する | どの論点・原因で止まるか |
| 主要範囲を学び、通し演習を計画に組み込める | 90分を測ってセット問題を解く | 解く順番・時間配分・入力や転記 |
この区分は学習上の提案で、公式の開始基準ではありません。90分演習も試験直前まで待つ必要はなく、復習する時間が残るよう計画に入れます。
まだ本試験対策へ進まない方がよいケース
反対に、本試験形式の問題を繰り返すより基礎学習を優先した方がよい状態もあります。
たとえば、
- 商業簿記・工業簿記に未学習の主要範囲が多く残っている
- 基本問題でも毎回答えや解説を確認している
- 仕訳の基本で頻繁に止まる
- 工業簿記の基本的な計算方法をまだ学習していない
といった場合です。
この段階で本試験形式の問題を解くと、
「分からない問題ばかりだった」
という結果になりやすく、何を復習すればよいのかも判断しにくくなります。
まず、
基礎学習
↓
基本問題
まで進め、自分で解ける論点を増やしましょう。
仕訳の基礎で止まっている場合は、仕訳ができない原因を先に確認します。
関連記事:簿記2級の仕訳ができないときは?覚え方より先に確認したい5つの原因
工業簿記で学習が止まっている場合は、どの段階でつまずいているか確認してください。
関連記事:簿記2級の工業簿記は難しい?苦手になる前に知っておきたい勉強の進め方
すべて完璧になるまで本試験問題を待つ必要もない
本試験対策を始めるのが遅くなる原因の一つが、
「テキストを完璧にしてから本試験問題を解こう」
と考えることです。
しかし、個別の基本問題と本試験形式の問題では、確認できることが違います。
基本問題では、
その論点を理解できているか
を確認しやすい一方、本試験形式では、
どの論点を使うか判断できるか
複数の処理を組み合わせられるか
90分の中で解けるか
といった点も確認できます。
そのため、
基礎学習を完璧にする
↓
初めて本試験形式へ進む
と完全に分ける必要はありません。
ある程度基礎学習が進んだら一度本試験形式を解き、そこで見つかった弱点を基礎問題へ戻って補強します。
基礎問題から本試験問題へ一方向に進むのではなく、両方を往復する
と考えましょう。
最初の本試験問題で70点未満でも点数だけで判断しない
日商簿記2級の合格基準は70%以上です。
そのため、初めて本試験形式の問題を解いて50点や60点だった場合、
「まだ本試験問題を解くのは早かった」
と思うかもしれません。
しかし、最初の演習では点数だけで判断しない方がよいでしょう。
確認したいのは、
なぜ点を取れなかったのか
です。
同じ50点でも、原因によって次にすることは変わります。
未学習の論点だった
まだ勉強していない論点が出題されて解けなかった場合です。
この場合は、間違えたというよりまだ学習していない状態です。
本試験問題を何度も解き直すより、まず該当する範囲を学習します。
未学習範囲が多いのであれば、一度本試験形式の演習を止めて基礎学習を進めてもよいでしょう。
学習済みだが忘れていた
以前勉強した論点なのに、解き方を思い出せなかった場合です。
この場合は、該当するテキストや基本問題へ戻ります。
確認した直後に終わらせず、時間を空けてもう一度基本問題を解き、自力で再現できるか確認します。
仕訳・計算を間違えた
論点は理解しているものの、仕訳や計算の途中で間違えた場合です。
ここでは、
知識不足
なのか、
計算ミス・読み違い
なのかも分けます。
たとえば仕訳なら、
- 取引内容を読み違えた
- 勘定科目を間違えた
- 借方・貸方を逆にした
- 金額計算を間違えた
など、原因をさらに細かくできます。
単に「仕訳を間違えた」と記録するより、次の復習につなげやすくなります。
時間が足りなかった
解き方は分かるのに、最後まで問題を解けなかった場合です。
この場合は知識だけではなく、
時間配分
も確認します。
一つの問題に長く時間を使っていないか、途中で何度も解き直していないかなどを振り返ります。
最終的には、2級の試験時間である90分を意識して本試験形式の問題を解く必要があります。
問題形式に慣れていなかった
個別の基本問題なら解けるものの、本試験形式になると、
「何をすればいいのか分からない」
状態になることがあります。
この場合は、本試験形式そのものへの慣れが必要です。
ただし、解けなかった問題をそのまま何度も暗記するのではなく、
どの論点が使われていたのか
を確認します。
必要なら該当する基本問題へ戻り、その後に別の本試験形式の問題で再確認します。
間違えた問題は「論点」と「原因」の2つで記録する
本試験形式の問題を解いた後、
「第2問を間違えた」
だけでは、次に何を勉強すればよいのか分かりません。
間違いを、
どの論点だったか
+
なぜ間違えたか
の2つで整理します。
たとえば、
| 論点 | 原因 | 次にすること |
|---|---|---|
| 仕訳 | 勘定科目を判断できなかった | 勘定科目の意味を確認 |
| 工業簿記 | 計算手順を忘れた | 基本問題へ戻る |
| 商業簿記 | 未学習だった | 該当範囲を学習 |
| 工業簿記 | 計算ミス | 解答過程を確認 |
| 総合問題 | 時間不足 | 時間を測って再演習 |
という形です。
これなら、
「50点だったから全部復習する」
のではなく、
点を落とした原因だけを優先して直す
ことができます。
特定の論点だけで繰り返し失点するなら、その論点の基本問題へ戻ります。
複数の分野で「忘れていた」が多いなら、復習の頻度そのものを見直す必要があります。
誤答記録の具体例
「連結会計を間違えた」ではなく、次のように記録すると復習箇所が絞れます。
| 論点 | 最初の誤り・原因 | 次の行動 |
|---|---|---|
| 連結会計:のれん | 取得原価から子会社資本の全額を引いた。親会社持分を使う判断ができていない | 投資と資本の相殺の基本問題へ戻り、持分割合の異なる問題で確認 |
| 工業簿記:総合原価計算 | 完成品換算量は正しいが、配分計算で金額を打ち間違えた | 誤入力した計算箇所を特定し、途中数値を残して再計算 |
| 総合問題:時間不足 | 90分では未解答。時間を延ばしても処理方法がわからなかった | 時間不足だけでなく知識不足としても分類し、基本問題へ戻る |
時間切れの問題は、演習終了後に時間を延ばして自力で解けるか確かめます。延長しても解けなければ、解く速さだけの問題ではありません。
同じ問題の解き直しは処理の確認に使い、定着は数値・条件の違う問題でも確かめます。答えを覚えて取れた点数と、初見の問題で取れた点数は分けて記録しましょう。
本試験問題を解いた後は弱点へ戻る
本試験形式の問題は、
一度解いて採点する
だけで終わらせません。
重要なのは、その後です。
基本的には、
本試験形式の問題を解く
↓
間違えた原因を特定する
↓
該当するテキスト・基本問題へ戻る
↓
自力で解ける状態にする
↓
別の本試験形式の問題で確認する
という流れを繰り返します。
この方法なら、本試験問題を解くたびに、
自分が次に勉強すべき場所
が分かります。
逆に、点数だけ記録して次の問題へ進み続けると、同じ弱点を残したまま演習回数だけ増えることがあります。
本試験対策は、
点数を測る作業
だけではなく、
弱点を発見する作業
として利用しましょう。
本試験が近づいたら90分で通して解く
基礎学習の途中で本試験形式を使う場合、最初から必ず90分通して解かなければならないわけではありません。
弱点を確認する目的なら、特定の問題だけ取り出して解くこともできます。
一方、試験が近づいてきたら、実際の試験時間を意識した演習が必要になります。
日商簿記2級の試験時間は90分です。
最終段階では、
90分を測る
↓
本試験形式を最初から最後まで解く
↓
時間配分を確認する
↓
採点する
↓
失点原因を分析する
ところまで行います。
ここで初めて、
「知識はあるのに時間が足りない」
「一つの問題に時間を使いすぎている」
といった、本番を想定した課題も見えてきます。
日本商工会議所が公開している公式サンプル問題も、本試験形式へ慣れるための演習材料として利用できます。
90分・合格基準70%以上は、日本商工会議所の2級試験科目・注意事項で確認できます。通し演習では、どの大問で時間を使ったかも残し、復習後に別のセット問題で確かめます。
ネット試験を受けるならパソコンで解く練習も確認する
簿記2級には、ペーパー形式の統一試験とパソコンで解答するネット試験があります。
日本商工会議所によると、ネット試験では受験者ごとに出題範囲から異なる問題が出題されます。
また、仕訳問題では勘定科目をプルダウン方式で選択し、そのほか金額や勘定科目名を入力する問題もあります。
そのためネット試験を受ける予定なら、紙の問題集だけで本試験対策を終えるのではなく、
パソコン上で問題を解く
経験もしておくとよいでしょう。
市販の予想問題集などには、ネット試験を想定した模擬試験プログラムが付属しているものもあります。
受験方式そのものをまだ決めていない場合は、先にネット試験と統一試験の違いを確認してください。
関連記事:簿記2級はネット試験と統一試験どっちがいい?違いと選び方を解説
画面上の解答方式や注意事項は、日本商工会議所のネット試験案内も確認してください。
本試験対策へ進むか3段階で判断する
「もう予想問題を始めていいのか」と迷ったら、次の3段階で確認します。
STEP1 主要範囲を一通り学習したか
まず、商業簿記・工業簿記の主要な学習範囲をどこまで進めたか確認します。
未学習の範囲が多く残っているなら、基礎学習を優先します。
すべてを完璧にする必要はありませんが、本試験形式を解いたときに「まだ習っていないから分からない」問題ばかりにならない程度まで進めます。
STEP2 基本問題を自力で解けるか
次に、学習済みの範囲について基本問題を解きます。
解説を読めば理解できるだけではなく、
問題文だけを見て、自分で解答まで進められるか
を確認します。
自力で解ける論点が増えてきたら、本試験形式へ進むタイミングです。
STEP3 本試験問題で弱点を探す
本試験形式へ進んだら、最初から70点以上を取ることだけを目的にしません。
まず、
どこで点を落としたか
+
なぜ点を落としたか
を確認します。
そして必要な基本問題へ戻ります。
この往復ができるようになれば、本試験形式の問題を学習に利用できる段階です。
過去問・予想問題は「何日前」より学習状況で始めよう
簿記2級の本試験対策は、
「試験1か月前になったら過去問を始める」
と一律に決める必要はありません。
まず、
主要範囲を学習する
↓
基本問題を自力で解けるようにする
↓
本試験形式の問題へ進む
という状態を目安にします。
本試験形式で70点に届かなかった場合も、点数だけを見て判断しません。
未学習だったのか
忘れていたのか
仕訳・計算を間違えたのか
時間が足りなかったのか
問題形式に慣れていなかったのか
を確認します。
原因が分かれば、次に戻る場所も決まります。
そして、
本試験形式
↓
弱点発見
↓
基本問題へ戻る
↓
もう一度本試験形式
というサイクルを繰り返します。
本試験形式の問題は、合格点を取れるか確認するだけのものではありません。
自分が次に何を勉強すればよいかを見つけるための教材
として活用しましょう。
古い問題集を利用するときは、日本商工会議所の出題区分表と受験年度への対応を確認します。2026年度は2022年度版の区分表が適用され、2027年4月1日以降の試験には改定が適用されます。過去の問題を解けることだけで、現在の範囲を網羅したとは判断しないでください。

