社労士試験の択一式で、過去問を繰り返しているのに点数が伸びない。模試ではある程度正解できても、本試験になると自信を持って答えられない。
そんな悩みを抱えている人は、勉強時間や問題演習の量を増やす前に、なぜ得点できなかったのかを分析することから始めてみてください。
択一式で点数が伸びない原因は、必ずしも知識不足だけではありません。制度の混同、正誤判断の曖昧さ、問題文の読み違いなど、原因によって必要な対策は異なります。
筆者も2026年度の社労士試験を受験し、択一式は70点満点中43点でした。試験中は正解できているという手応えが薄く、結果を振り返るなかで、正解数だけでは自分の理解度を十分に把握できていなかったと感じています。
この記事では、択一式の点数が伸びない原因を4つに整理し、過去問や模試の結果から復習の優先順位を決める方法を解説します。
社労士の択一式で点数が伸びないとき、最初に確認すること
択一式の点数が伸びないとき、「もっと過去問を解こう」「テキストを最初から読み直そう」と考える人もいるでしょう。
しかし、原因がわからないまま勉強量を増やしても、同じ弱点を残してしまう可能性があります。
最初に確認したいのは、どの科目で失点したかだけでなく、どのような理由で正誤判断を間違えたのかという点です。
総得点だけでなく科目別の得点を見る
社労士試験の択一式は、7つの科目群から各10問、合計70問が出題されます。
合格判定では総得点に加えて科目別の基準も設けられるため、特定の科目だけ極端に得点が低い状態は避けたいところです。なお、具体的な合格基準は年度によって異なるため、受験年度の公式発表を確認してください。
まずは過去問や模試の結果を科目別に整理しましょう。
| 科目 | 得点 | 確認すること |
|---|---|---|
| 労働基準法・労働安全衛生法 | /10点 | 基本事項と例外を区別できているか |
| 労働者災害補償保険法・徴収法 | /10点 | 給付要件や手続きの違いを理解しているか |
| 雇用保険法・徴収法 | /10点 | 給付の対象者や期間を整理できているか |
| 一般常識(労働一般・社会保険一般) | /10点 | 法令知識と統計・白書対策に偏りがないか、制度間の違いを整理できているか |
| 健康保険法 | /10点 | 給付要件や適用関係を判断できているか |
| 厚生年金保険法 | /10点 | 支給要件や計算の仕組みを理解しているか |
| 国民年金法 | /10点 | 被保険者区分や給付要件を整理できているか |
※労災保険法・雇用保険法の各10問には徴収法が含まれます。一般常識は労働一般・社会保険一般を合わせて10問です。上表は学習上の確認用であり、択一式の7科目群・合計70点に沿って整理しています。
科目別の得点を並べると、重点的に対策すべき科目が見えてきます。ただし、1回の模試で得点が低かった科目が、必ずしも最も苦手な科目とは限りません。
出題された論点との相性もあるため、複数回の結果や日頃の問題演習と合わせて判断することが大切です。
正解した問題にも弱点が隠れている
得点分析で見落としやすいのが、正解した問題の扱いです。
例えば、次の2つは同じ正解でも、理解度が異なります。
- 根拠を説明して正解した問題: 制度の要件や例外を理解し、選択肢を判断できた
- 消去法や曖昧な記憶で正解した問題: 結果は正解でも、別の聞かれ方をすると判断できない可能性がある
正解した問題をすべて「理解済み」として扱うと、後者のような弱点が残ってしまいます。
特に社労士試験では、制度の対象者、要件、期間、例外などが細かく問われます。結論を覚えているだけでは、条件を変えた問題に対応できないことがあります。
そのため、正解・不正解だけでなく、正解した理由を説明できるかを確認することが重要です。
過去問の使い方から見直したい場合は、過去問の年数・周回数の考え方と具体的な復習方法も参考にしてください。
択一式の点数が伸びない4つの原因
択一式で得点できない理由は、大きく4つに整理できます。
自分がどの原因に当てはまるかを確認すると、復習で優先すべきことが明確になります。
1.知識そのものが不足している
問題文に登場する制度や用語を知らず、正誤を判断できない状態です。
例えば、ある給付について、制度の目的は知っていても、支給対象者や具体的な要件を学習していなければ、正しい選択肢を選ぶことは難しくなります。
この場合、必要なのは問題演習の量を増やすことよりも、不足している基礎知識を補うことです。
間違えた問題の解説を読むだけでなく、テキストの該当箇所に戻り、制度の全体像と基本的な要件を確認しましょう。
知らなかった論点が複数ある場合は、共通する分野をまとめて復習すると、知識を整理しやすくなります。
2.似た制度や数字を混同している
制度の概要は理解していても、細かな要件や期間を取り違えるケースです。
社労士試験では、似た制度でも対象者、適用条件、期間などが異なることがあります。
例えば、次のような混同です。
- 似た名称の給付について、支給要件を取り違える
- 届出期限と申請期限を混同する
- 原則的な取扱いと例外的な取扱いを区別できない
- 異なる制度の年齢要件や期間を混同する
こうした間違いは、同じ問題を繰り返して正解できるようになっても、別の角度から問われると再発することがあります。
対策として有効だと考えられるのは、似た制度を並べて、何が同じで何が違うのかを整理することです。
単に数字を暗記するのではなく、その数字が何の要件を表しているのかまで確認しましょう。
3.正誤判断の根拠が曖昧になっている
問題を読んだときに「見覚えがある」「たしか正しかったはず」と感じても、なぜ正しいのかを説明できない状態です。
この場合、知識をまったく持っていないわけではありません。しかし、選択肢の一部が変更されたときに、その違いを見抜けない可能性があります。
例えば、過去問の文章を覚えているために正解できても、対象者や期間を変更した類似問題では判断に迷うことがあります。
復習では、正解した選択肢についても、次の点を確認してみてください。
- どの制度について問われているか
- 正誤を決める条件は何か
- 誤りがある場合、どの部分が誤っているか
- 正しい内容に直すとどうなるか
すべての選択肢について長い説明を書く必要はありません。
重要なのは、正誤を判断した決め手を、自分の言葉で説明できる状態にすることです。
4.問題文の読み違いや時間配分で失点している
知識があっても、問題文の条件を読み落としたり、時間が足りなくなったりして失点する場合があります。
例えば、「誤っているもの」を選ぶ問題で「正しいもの」を選んでしまう、例外条件を読み飛ばすといったケースです。
この場合、知識の復習だけでは十分な対策になりません。
問題演習では、設問が何を求めているかを確認し、正誤を左右する条件を意識して読む練習が必要です。
また、時間不足が繰り返し発生する場合は、解答に時間がかかった問題や迷った問題を記録し、どこで時間を使っているのかを把握しましょう。
ただし、時間がかかる原因が知識不足にある場合もあります。読解や時間配分の問題だと決めつけず、解答過程を振り返ることが大切です。
模試・過去問の結果から復習の優先順位を決める方法
失点原因を分類できたら、次は復習の優先順位を決めます。
ここで重要なのは、間違えた問題をすべて同じように復習しないことです。
理解していない論点、知識が曖昧な論点、単純な読み違いでは、必要な対策が異なります。
ステップ1.答案を使って失点原因を記録する
まず、模試や過去問の結果を使って、失点原因を記録します。
複雑な管理表を作る必要はありません。最初は次の項目があれば十分です。
| 記録項目 | 記入例 |
|---|---|
| 科目・論点 | 健康保険法・傷病手当金 |
| 正誤 | 不正解 |
| 原因 | 支給要件の混同 |
| 復習内容 | 支給要件と関連する取扱いを整理 |
| 再確認 | 類似問題で判断できるか確認 |
※上記は記録方法を説明するための架空の例です。
記録の目的は、学習履歴を細かく残すことではありません。同じ原因による失点を繰り返さないために、次の行動を決めることです。
特に、正解したものの根拠が曖昧だった問題も記録しておくと、復習対象の見落としを減らせます。
コピーして使う失点記録:まずは1問だけ、次の欄をノートやメモへ写してください。問題文そのものではなく、出典・番号と自分の判断を残します。
記録日: 問題の出典・番号: 科目・論点: 正誤・かかった時間: 解答時の根拠: 確認した正しい判断根拠: 原因の分類: 戻る教材・ページ: 次に解く問題: 再確認する日: 再確認の結果: 改善しない場合の次の対応:
再確認日は、例えば「次に勉強できる2日後」のように日付で決めます。この間隔は運用例であり、最適な復習間隔や効果を保証するものではありません。解答を見ずに解き直し、正誤だけでなく、各肢の判断根拠を説明できたかを結果欄へ記入してください。未実施なら「未実施」とし、新しい日付を決めます。
例えば「正解したが、ほかの肢の誤りを説明できなかった」なら、正解済みでも判断根拠が曖昧な問題として残します。「根拠は説明できたが、設問の『誤っているもの』を読み違えた」なら、知識の読み直しと設問確認の練習を分けて考えます。いずれも記録方法を示す架空の例です。
再確認でも説明できなかった理由が、教材の解説不足なのか、復習を実行できなかったのかまで分かると、追加すべき支援を絞れます。前者なら別の解説や質問環境、後者なら学習量・予定の調整を先に検討しましょう。講座を比較する段階では、再受験で必要な教材・サポートを選ぶ判断基準に沿って確認できます。
ステップ2.頻出論点と基礎知識の取りこぼしを優先する
復習の優先順位は、単純に間違えた問題数だけで決める必要はありません。
次の3つを基準に考えると、限られた学習時間を配分しやすくなります。
- 重要度: 基本的な制度や繰り返し問われる論点か
- 理解度: 正誤の根拠を説明できるか
- 改善可能性: 比較的短い復習で判断できるようになりそうか
例えば、基本的な支給要件を何度も間違えている場合は、優先して復習したいところです。
一方、細かな例外や特殊な論点を1問間違えたからといって、そこに長時間を費やすことが最善とは限りません。
もちろん、例外規定が重要な論点になることもあります。出題頻度だけで機械的に判断するのではなく、制度の重要性や現在の理解度も踏まえて優先順位を決めましょう。
ステップ3.科目別の弱点と論点別の弱点を分けて考える
「厚生年金保険法が苦手」「労働基準法が苦手」という科目単位の認識だけでは、具体的に何を復習すべきか決めにくい場合があります。
同じ科目でも、理解できている分野と理解が不足している分野が混在しているためです。
例えば、ある科目の得点が低かったとしても、原因が一部の論点に集中しているのであれば、科目全体を最初から学習し直す必要はないかもしれません。
反対に、複数の基本論点で失点している場合は、部分的な暗記ではなく、制度全体の理解を見直す必要があります。
科目別の得点は対策する範囲を見つけるために使い、論点別の分析は具体的な復習内容を決めるために使うと整理しやすくなります。
分析した課題を次の学習につなげるには、不合格の原因を踏まえた再受験の学習計画も参考にしてください。
択一式43点だった筆者が本試験後に見直したこと
ここからは、筆者自身の2026年度社労士試験の振り返りです。
筆者の本試験結果は、選択式22点、択一式43点の合計65点で、不合格でした。
択一式は70点満点中43点でしたが、試験中は正解できているという手応えが薄く、確信を持って答えられない問題がありました。
この経験から、今後の学習では正解数だけでなく、判断の根拠を重視する必要があると考えています。
正解数だけでは理解度を測れなかった
これまでの学習では、問題演習の正答率や模試の科目別得点を、理解度を確認する主な指標としていました。
しかし、本試験を振り返ると、正解できた問題の中にも、消去法や曖昧な記憶に頼っていたものがあったと感じています。
また、制度の概要を理解していても、細かな要件や例外、期間の違いを十分に整理できていない部分がありました。
もちろん、これらが実際に何点の失点につながったのかを正確に特定できているわけではありません。
ただ、問題を見れば正解がわかることと、根拠を説明して正誤を判断できることは異なるという点が、今回の受験で得た大きな気づきです。
次回試験に向けて変える学習方法
次回試験に向けては、過去問を解いた回数や正答率だけを追うのではなく、各選択肢の判断根拠を確認する学習に変えていきます。
具体的には、正解した問題も含めて、根拠を説明できなかった論点を復習対象にします。
また、模試や問題演習の結果を科目別だけでなく論点別にも整理し、知識不足なのか、制度の混同なのか、判断の曖昧さなのかを確認する方針です。
この方法で得点が改善するかどうかは、今後の学習と模試の結果を通じて検証していきます。
選択式では重要な語句を正確に選ぶ練習も必要になるため、選択式の基準点割れの原因と勉強法も合わせて確認しましょう。
独学を続けるか、教材・通信講座を見直すか
択一式の点数が伸びないからといって、必ずしも新しい教材や通信講座が必要になるわけではありません。
まずは現在の学習方法で改善できる問題なのか、それとも教材や学習環境を見直したほうがよい問題なのかを区別しましょう。
自分で修正できる学習上の課題
次のような場合は、現在の教材を使いながら学習方法を改善できる可能性があります。
- 解説を読むと理解できるが、復習が不十分
- 似た制度を比較して整理していない
- 正解した問題の根拠を確認していない
- 間違えた論点の記録や再確認ができていない
このような課題に対しては、教材を増やす前に、復習方法を見直すことをおすすめします。
新しい教材を購入しても、同じ学習方法を続けていれば、同じ問題が残る可能性があるためです。
教材や通信講座の見直しを検討したいケース
一方、次のような場合は、教材や通信講座の見直しが選択肢になります。
- テキストを読んでも制度の仕組みを理解できない
- 基礎知識の不足が広い範囲に及んでいる
- 法改正への対応状況がわからない
- 自分で弱点を整理して学習計画を立てることが難しい
- 質問できる環境や学習の進捗管理が必要
ただし、通信講座を利用すれば必ず点数が伸びるわけではありません。
講座を選ぶ場合も、知名度や価格だけで判断するのではなく、自分の失点原因を改善するために必要な教材・解説・サポートがあるかを確認することが重要です。
特に再受験者の場合、すでに理解している範囲まで一から学び直す必要があるのか、弱点を重点的に補強できる教材が適しているのかを考えましょう。
具体的な講座選びに進む場合は、再受験で独学・再受講・乗り換えを選ぶ判断基準も参考にしてください。
まとめ|点数ではなく失点原因から次の学習を決める
社労士試験の択一式で点数が伸びないときは、勉強時間や問題演習の量を増やす前に、失点原因を分析することが重要です。
原因は大きく、知識不足、制度の混同、判断根拠の曖昧さ、読解・時間配分の4つに整理できます。
復習では、間違えた問題だけでなく、正解したものの根拠を説明できなかった問題にも目を向けましょう。
また、科目別の得点と論点別の弱点を分けて分析し、重要度や理解度を踏まえて優先順位を決めることが大切です。
筆者自身も、2026年度の択一式43点という結果を踏まえ、正答率中心の学習から、根拠を説明できるかを重視する学習への見直しを進めています。
「何問間違えたか」で終わらせず、「なぜ間違えたか」「次に何を変えるか」まで考えること。
その積み重ねを、次の試験に向けた学習改善につなげていきましょう。

